吉田修一さんの『国宝』をAudibleで聴きました。
歌舞伎のことはほとんど知らない状態で聴き始めましたが、上下巻あわせて40時間を超える長編なのに、長さが苦にならないくらい面白かったです。
任侠の家に生まれた喜久雄が歌舞伎の世界へ入り、才能、血筋、努力、人との出会いに翻弄されながら芸の道を進んでいく物語です。
特にAudible版は、尾上菊之助さんの朗読が作品にとても合っていました。歌舞伎の知識がなくても場面を想像しやすく、舞台の空気まで耳から入ってくるように感じました。
この記事では、『国宝』のあらすじ、Audible版の基本情報、実際に聴いた感想、尾上菊之助さんの朗読、映画版との違いについてまとめます。
『国宝』のあらすじ

任侠の家に生まれた喜久雄が、歌舞伎の世界で芸に生きる長い人生を描いた物語です。
物語の中心となるのは、長崎の任侠の家に生まれた立花喜久雄です。
ある出来事をきっかけに、生まれ育った世界とはまったく違う歌舞伎の世界へ入り、そこで芸の道に進むことになります。
喜久雄には美しさと才能があります。一方、歌舞伎の家に生まれた俊介には、代々受け継がれてきた血筋があります。
外から入った者と、家に生まれた者。才能と血筋。努力と運。二人の関係を軸にしながら、芸に人生をかける人たちの喜びや苦しさが描かれていきます。
舞台は長崎、大阪、東京へと移り、喜久雄の人生も大きく変わっていきます。歌舞伎の専門知識がなくても、人間ドラマとして十分に楽しめる作品でした。
『国宝』Audible基本情報
Audible版は「上 青春篇」「下 花道篇」の2冊です。どちらも尾上菊之助さんが朗読しています。
- 著者:吉田修一
- ナレーター:尾上菊之助
- 再生時間:上巻 21時間7分/下巻 22時間2分
- 配信日:上巻・下巻ともに2019年12月13日
- ジャンル:小説・文学、芸道小説
- Audible:上下巻とも聴き放題対象
- 受賞歴:2018年度芸術選奨 文部科学大臣賞、第14回中央公論文芸賞
- 映像化:映画『国宝』が2025年公開
- 関連商品:単行本、文庫版、電子版、コミック版 など
原作は2018年に上下巻で刊行され、2021年に文庫化。さらに2025年には愛蔵版も発売されています。
関連商品は、出版社で確認できる単行本・文庫版・愛蔵版・電子版だけに整理しました。形式が確認できない商品は入れていません。
Audible版には、本編に加えて尾上菊之助さんによる特別音声版も収録されています。通常の朗読とは少し違い、舞台を意識した語りを楽しめるのが特徴です。
Audibleで『国宝』を聴いた感想



上下巻で40時間を超えますが、先が気になって長さはほとんど苦になりませんでした。かなり面白かったです。
歌舞伎をほとんど知らないので、聴く前は「専門用語が多くて難しいのでは」と少し身構えていました。
でも実際は、歌舞伎の説明を理解することよりも、喜久雄や俊介がどう生きるのかの方が気になりました。
知らない世界だから置いていかれるのではなく、知らない世界だからこそ新鮮でした。
歌舞伎を知らなくても人間ドラマとして面白い
『国宝』の魅力は、歌舞伎そのものだけではありません。
喜久雄は才能がありますが、歌舞伎の家に生まれたわけではありません。俊介には血筋がありますが、それだけで何もかも手に入るわけでもありません。
才能があること、家に生まれること、努力を続けること。それぞれが強みであり、同時に苦しさにもなっていくところが面白かったです。
誰か一人だけを応援するというより、二人の人生がどう変わっていくのかを見届けたくなりました。
喜久雄の人生そのものに引き込まれた
任侠の家に生まれた少年が、歌舞伎の世界へ入り、芸に人生をかけていく。
設定だけなら華やかな成功物語にも見えますが、実際はそう単純ではありません。
芸を選ぶことで得るものもあれば、失うものもあります。人との関係も変わり、成功したからすべてが幸せになるわけでもありません。
それでも芸から離れられない喜久雄を聴いていると、「ここまで一つのものに人生をかけるとはどういうことなのか」と考えさせられました。
尾上菊之助さんの朗読で舞台を想像しやすい
Audible版で一番よかったのは、尾上菊之助さんの朗読です。
歌舞伎役者の方が読んでいるからなのか、台詞だけでなく、言葉の間や声の出し方にも舞台を感じました。
歌舞伎の場面では、実際に舞台を見ているわけではないのに、人物の立ち位置や空間の広がりまで頭の中に浮かんでくることがあります。
紙で読む良さとは別に、この作品は「耳で聴く意味」がかなり大きいと感じました。
特別音声版があるのもAudibleならでは
Audible版には、本編終了後に特別音声版も収録されています。
私はこの特別音声版も聴きました。通常の朗読より舞台を意識した語りになっていて、「声だけなのに舞台を想像できる」という感覚がより強くなりました。
長編を最後まで聴いたあとに、同じ作品を別の角度から楽しめるのもよかったです。
40時間を超えても長すぎるとは感じなかった
上巻21時間7分、下巻22時間2分なので、合計すると43時間を超えます。
数字だけを見るとかなり長いのですが、私は途中でやめたくなる感じはありませんでした。
喜久雄と俊介の関係、舞台での成功や失敗、周囲の人との変化など、次に何が起きるのかが気になります。
短時間で一気に聴く作品ではありませんが、通勤や家事などで少しずつ聴く長編としては、むしろAudibleに向いていると思いました。
映画を観たあとでも原作は別の面白さがある
Audibleで原作を聴いたあと、映画版も観ました。
映画は舞台や役者の表情を映像で見られる強さがありますが、原作は喜久雄の長い人生や周囲の人物との関係を、より時間をかけて受け取れます。
先に原作を聴いてから映画を見るのも、映画を見てから原作を聴くのも、どちらも楽しめる作品だと思います。
『国宝』はこんな人におすすめ
歌舞伎に詳しい人だけでなく、長い人生を描く人間ドラマや、ひとつの道に人生をかける物語が好きな人に向いています。
- 歌舞伎を知らなくても楽しめる小説を探している人
- 重厚な人間ドラマが好きな人
- 芸に人生をかける人物の物語が好きな人
- 尾上菊之助さんの朗読をじっくり聴きたい人
- 映画『国宝』を観て原作も気になっている人
反対に、短時間で読み終えられる作品を探している人にはかなり長く感じると思います。上下巻で43時間を超えるため、少しずつ聴く前提で選ぶ方が向いています。
まとめ
『国宝』は、歌舞伎の知識がほとんどなくても、人間ドラマとして十分に楽しめる長編小説でした。
私は、喜久雄がどんな人生を歩み、芸の世界で何を得て何を失っていくのかが気になり、上下巻とも最後まで面白く聴けました。
特に尾上菊之助さんの朗読は、この作品をAudibleで聴く大きな理由だと思います。声の中に舞台の空気を感じられ、特別音声版まで含めて音声ならではの楽しさがありました。
映画版を観て『国宝』が気になった人にも、歌舞伎の物語は難しそうと迷っている人にも、Audibleから入る選択肢はありだと思います。


