Audibleで知念実希人さんの『ヨモツイクサ』を聴きました。
先に聴いた『硝子の塔の殺人』は館を舞台にした本格ミステリーでしたが、今回は北海道の森が舞台のバイオ・ホラー。同じ作者がまったく違う怖さをどう描くのか、そこが気になった一冊です。
始まりは行方不明事件とヒグマの脅威。それだけでも緊張するのに、森へ入るほど説明のつかない痕跡が増え、物語の見え方が変わっていきます。
2026年6月には文庫版も発売され、改めて手に取りやすくなりました。
ここでは結末に触れず、あらすじ、Audible版の基本情報、実際に聴いて印象に残ったところをまとめます。
『ヨモツイクサ』のあらすじ

人なのか、ヒグマなのか。禁域の森に残された痕跡が、家族の失踪へつながっていきます。
物語の舞台は北海道旭川。アイヌの人々が恐れてきた「黄泉の森」と呼ばれる禁域があります。
大手ホテル会社が開発を進めようとした矢先、作業員が行方不明になりました。現場に残されていたのは、何かに蹂躙されたような痕跡と、死の直前に目撃された蒼い光です。
道央大病院の外科医・佐原茜は、7年前に家族が消えた事件を今も受け入れきれずにいました。その場所も黄泉の森の近くです。
二つの事件に結びつきがあるのか確かめるため、茜は森へ向かいます。そこで待っていたのは、野生動物だけでは説明できない恐怖でした。
『ヨモツイクサ』Audible版の基本情報
Audible版の朗読者、再生時間、配信状況をまとめました。
2023年に単行本として刊行された作品で、2026年6月10日に文庫版が発売されました。医師でもある知念実希人さんが、医学知識と日本神話のイメージを組み合わせたホラーです。
Audible版は小橋達也さんの朗読で14時間22分。落ち着いた場面では状況がすっと入り、森の異変が近づく場面では声の張りが緊迫感を高めます。
Audibleで『ヨモツイクサ』を聴いた感想



森の怖さだけで終わらず、医学と神話が結びついたところから物語が大きく動きます。
最初に感じたのは、北海道の森が持つ広さと、人の手が届かない場所へ入っていく怖さでした。
そこへ茜の家族に何が起きたのかという疑問が重なり、先を確かめたくなります。
ヒグマの恐怖から未知の存在へ変わっていく
森へ入る前は、ヒグマによる被害が物語の中心だと思っていました。
ところが、現場に残る傷や蒼い光など、野生動物では説明しきれないものが少しずつ増えていきます。
何が潜んでいるのか分からない段階がいちばん不気味で、音だけで森の暗さや足元の見えなさを想像すると、緊張がさらに強くなりました。
正体が見えてからは恐怖の種類が変わり、医学的な説明と日本神話を思わせる世界が一つにつながっていきます。その広がり方が面白かったです。
佐原茜の決意が物語の芯になっている
茜は、ただ事件に巻き込まれる主人公ではありません。
7年前から家族を探し続け、自分の目で確かめるために黄泉の森へ入ります。恐ろしい状況でも前へ進む理由がはっきりしているので、物語の大きな展開にも気持ちを置いていかれません。
外科医として冷静に状況を見る一方で、家族のことになると揺れる。その両方があるからこそ、茜の選択を最後まで見届けたいと思いました。
小橋達也さんの朗読で緊迫した場面が近くなる
小橋達也さんは、説明する場面と危険が迫る場面で声の力を変えています。
茜の張りつめた気持ち、猟師たちの警戒、森の奥で起きる異変が声から伝わり、映像がなくても場面を思い浮かべられました。
静かな語りが続いたあと、突然状況が変わる瞬間の差も印象的です。怖さと謎解きの両方を音で楽しめる朗読でした。
『ヨモツイクサ』はこんな人におすすめ
自然の脅威と正体の分からない存在が重なるホラーを、音声で味わいたい人に合います。
- 北海道の森を舞台にしたホラーを楽しみたい人
- 医学と日本神話が交わる物語に興味がある人
- 家族の失踪に向き合う主人公を見届けたい人
- 怪異の正体を考えたい人
- 小橋達也さんの緊迫感ある朗読を聴きたい人



知念実希人さんの本格ミステリーも気になる方は、Audible版『硝子の塔の殺人』の感想も参考にしてください。


まとめ
『ヨモツイクサ』は、北海道の禁域で起きた失踪事件を入口に、自然、医学、日本神話の恐怖が一つにつながるバイオ・ホラーです。
佐原茜が家族の行方を求めて森へ入り、小橋達也さんの朗読がその緊張を近くに感じさせます。
最初に思い描いた恐怖が別の形へ変わり、最後には物語の大きな仕掛けがつながる一冊でした。
『ヨモツイクサ』はAudibleの聴き放題対象として配信されています。初めて利用する場合は、30日間の無料体験中に聴くこともできます。
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